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コカ・コーラ社が適正な銘柄想起調査を有効活用し勝訴 PDF 印刷 Eメール
作者 Administrator   
2008年08月 25日(月曜日) 23:40
コカ・コーラ社が適正な銘柄想起調査を有効活用し勝訴(1)
特許庁が立体商標を厳しく審査する理由

[2008/08/25]

2008年5月,知的財産高など裁判所が米The Coca-Cola Companyによる「コーラ飲料」の容器の立体商標の拒絶審決の取消を認める判決を下した。これは,特許庁が同社の立体商標出願の登録を拒絶したことが 発端である。同社と特許庁との間で争点となったのが容器の“自他商品識別力”である。自他商品識別力は,商標登録の代表的な要件の1つであり,立体商標で は特に重視される。本連載は2回にわたってCoca-Colaの知財高裁への訴えとその判決の要点を解説する。連載の第1回の今回は前提として立体商標と はどのような制度なのかを解説する。
(まとめは品田茂=日経BP知財Awareness編集)

半永久的に企業の信用を保護する商標権

 商標は使用することにより,企業の商品やサービスの “自他商品・役務の識別”,“出所表示”,“品質保証”,“広告宣伝”,などの諸機能を発揮し,その結果,商標に“業務上の信用”が累積的に蓄積される。 したがって,商標を使用する限り,業務上の信用は存在するため,商標権の存続期間は,本来限る必要はない。そのため,商標法は,更新登録制度を設け,更新 する限り,半永久的に商標を保護する。立体的形状も登録要件を満たせば立体商標(商標権)として半永久的に保護される。
 立体的形状を登録して保護する権利には,従来より,意匠権や特許権,実用新案権がある。これらの権利と商標権とは,主として(1)保護の対象,(2)新規性などの要求の有無,(3)権利の存続期間,の3点で異なる。
 (1)に関しては,特許権・実用新案権は,発明・考案,といった技術的思想の創作を保護対象としている。意匠権は,意匠,即ち物品の形状など(物品の美 的外観)を保護対象とする。これに対し,(立体)商標権は,形式的には商品の立体的形状または立体的形状と平面標章(文字,図形,記号,色彩,これらの組 み合わせなど)との結合により構成される商標を保護対象とする。
 (2)に関しては,発明・考案,意匠を登録するには“新しい”ことが必要である。秘密の範囲を脱した発明・考案,意匠を保護しても,技術の進歩に貢献し ない。また,製品の需要増大などにも寄与しないからである。これに対し,商標は新しいものである必要はない。商標は,識別標識として採択する選択物にすぎ ないからである。
 (3)に関しては,特許権は原則として出願日から20年,実用新案権は出願日から10年,意匠権は登録日から20年で存続期間が満了する。陳腐化した発 明などをいつまでも独占させておくのは妥当ではないため,保護と利用の調和を図ったものである。これに対し,商標権の存続期間は一応設定登録日から10年 であるが,10年ごとに更新が可能である。そのため,更新する限り,半永久的に権利を保持できる。(図1)。「商標を継続使用する企業活動が続く限り,商標は保護されなければならない。企業が望めば権利を持続できるのが商標権の特徴である。」(三好内外国特許事務所 弁理士の岡村雅一氏)。

 図1
図1



立体商標制度を導入した理由

 

 立体商標とは,一般に立体的形状または立体的形状と平面標章との結合により構成される商標をいう。このような立体商標の例として,日本ケンタッキー・フライド・チキンの「カーネルサンダース立像」や不二家の「ペコちゃん人形」などがある。
 特許庁が立体商標制度を導入した主な理由は,(a)立体商標保護のニーズ,(b)商品の形状を“商品表示”として保護(不正競争防止法による保護)を求める訴訟が数多いこと,(c)立体商標保護の国際的な趨勢,の3点である。
 (a)に関しては,現実の社会において,本制度導入以前から広告用の店頭人形や商品に付された立体物のような立体的形状が自他商品などの識別標識として使用され,現に識別機能を発揮していたこと。
 (b)に関しては,不正競争防止法(2条1項1号・2号)の適用を受けるには,周知性あるいは著名性を立証しなければならなかったが,それでも多数の訴訟が提起されたこと。
 (c)に関しては,米国,英国,フランス,ドイツなど多くの国で立体商標を登録の対象としていたこと,さらに立体商標を認めるマドリッド・プロトコルへの加入を考慮すると,制度の国際的調和を図る必要があったこと。
 このような理由から立体商標制度は,平成8(1996)年の商標法の改正により導入された。

立体商標を厳しく審査する特許庁

 

 特許庁は,立体商標制度を導入したが,出願された立体商標が「指定商品(その包装を含む)又は指定役務の提供の用に供する物」の立体的形状からなる場 合,厳しく審査する。その大きな理由の1つが前述の(3)である。このことは,以下の登録要件の運用に現れている。(ⅰ)自他商品などの識別力を有するこ と(商標法第3条1項各号に該当しないこと),(ⅱ)商品などの機能を確保する上で不可欠な立体的形状でないこと(商標法第4条1項18号に該当しないこ と)の2点である。
 (ⅰ)は,商標としての普遍的な適格性を求める要件である。自他商品などの識別力とは,商標登録受けようとする文字・図形や立体的形状などに自己の商品 などと他人の商品などを区別(識別)する力があるか,という問題である。区別できなければ使用しても前記出所表示機能などの本質的機能を発揮し得ないから である。ここでは,特に商標法第3条第1項第3号が問題となり,出願された立体商標が,指定商品または指定商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示 する標章のみからなる商標である場合は拒絶される。これらの形状は取引の際に,一般的に使用されることの多い表示であるからである。
 また,指定商品の包装などの立体的形状は,多くの場合,商品の包装などに期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品の包装などの美感をより優れた ものとするなどの目的で選択されるものであって,商品・役務の出所を表示し,自他商品などの識別標識として用いられることは少ない。
 さらに,特許庁は本来,「技術的機能面に新規性などがあれば特許権・実用新案権で,美感面に新規性などがあれば意匠権で保護するべき」という考え方であ る。これは,前述(3)の理由である。登録要件(ⅱ)商標法第4条第1項第18号の趣旨を考慮してもそういうことがいえる。
 したがって,同種の商品などが採用し得る範囲内の立体的形状である場合はもちろん,これに特徴的な変更,装飾などが施されたものであっても,需要者など が全体として指定商品などの形状を表示してなるものと認識するに止まる限り,そのような立体商標は識別力を有しないものとされ,その運用は厳しい。

長年の使用によって例外的に商標登録できる場合も

 

 商標法第3条1項各号に該当する場合であっても,使用により識別力を獲得した場合,例外的に登録を受けることができる(商標法第3条第2項)。長年継続 的に使用することにより出所表示機能を持つに至ることが経験的に認められるからである。本項の適用を受けるには,“実際に使用している商標並びに商品”, “使用開始時期,使用期間”,“生産,譲渡の数量または営業の規模”,“広告宣伝の方法”,“一般紙,またはインターネットなどによる記事掲載の回数及び 内容”,“需要者の商標の認識度を調査したアンケート結果などの事実”を,印刷物,納入伝票,広告業者などの証明書,公的機関などの証明書,一般紙などの 記事,需要者を対象とした商標の認識度調査(アンケート)の結果報告書などの証拠方法により証明する必要がある。このような登録要件をクリアすれば商標登 録される。
 実務的には,“商標法第3条第1項第3号に該当しないこと”,“使用により識別力を獲得したこと(商標法第3条第2項)”,が主な争点となる。特に後者 では,特許庁は,出願に係る指定商品と,使用商品の同一性の他,出願に係る立体的形状(出願商標)と,使用している立体的形状(使用商標)とが同一である ことが要求している。
 通常,商品は立体的形状と文字などの平面標章を組み合わせて流通している。そのため,出願商標と使用商標とは,同一性がないという理由で適用を認められ ていなかった。文字などの平面標章部分で取引されており,立体的形状部分のみが独立して自他商品識別機能を有するに至っているとはいえない,というのがそ の理由である。
「現在まで商標法第3条第2項の適用を受けて登録された立体的形状のみからなる商標は,数例しかない」(岡村氏)。

 

最終更新 ( 2008年08月 25日(月曜日) 23:50 )